スポーツコーチング

石川尚子さんに聞く「マジックが始まりだした」

鈴木悟さんは、仙台市民球団企業組合の理事長であり、東北地方に2つしかないベースボールスクール「TBA東北ベースボールアカデミー」の代表者。
野球を通して地域振興、地域活性に積極的に取組とともに、TBA東北ベースボールアカデミーでは、日々こどもたちと真正面から向き合っている。

───── 東北ベースボールアカデミー(以下TBA)は、昨年から本格的にコーチングを導入し始めましたが、理事長の鈴木さんがコーチングに触れたのはいつ頃からだったのでしょうか?

「そうですね、今から10年程前だったでしょうか。
でもね、当時はコーチングに全然興味関心がなかったから、コーチングと聞いてもピンと来なかったのね(笑)。きっとその時の僕には、コーチングやコミュニケーションといったことは、自分自身やTBAにはそんなに必要じゃなかったんでしょうね(笑)。」

───── では、今なぜコーチングを必要としたのでしょうか?

「平成17年5月に野球スクールを開校してもう7年目になるんですが、やっと最近になって、『こどもにかかわる』っていうことがどういうことなのかが何となく分かってきたのね(笑)。
例えば、TBAでは、こどもやこどもたちにかかわっていくことに正解なんて無いと思って接していたんですが、いつの頃からか、この発想自体をやめようと思ったんです。
なぜなら、この発想ってこどもやこどもたちに関わっていくことに正解があるってことが前提になっているんです。
つまり、『こどもやこどもたちにかかわっていくことに正解はない』って言う正解がね。正解を創り出して行くのはこどもたちであって、私たち大人や指導者ではないし、正解はこともたちの数だけあるんですよね。
今までは、私たちTBAが持っている知識や技術で何とかしてやろうとか、こどもたちに関わる正解があるんだって言う正解にこだわっていたのですね。」
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───── それをやめたんですか?

「はい。もうね、正解探しはやめたんです(笑)。
手放すって言うのかな。そのかわりにこどもたちに答えを探してもらう、創り出してもらうことにしたんです。
そのために我々スタッフが何が出来るのかをこれまで以上に真剣に考え始めたんです。我々スタッフが変わるためにコーチングを必要としたのかもしれませんね(笑)。」

───── スタッフが変わるために?

「そう、これまでは、こどもたちを『どうやって変えてやろう』って考えていたのかも知れませんね。
それが、我々TBAスタッフが『どう変われるか』『何を変えられるか』って言うところにフォーカスしはじめたんです。」

───── 鈴木さんやTBAスタッフに変化はありましたか?

「そうですね、一番の変化は、こどもに対する興味関心がより一層深まりましたね。
例えば、練習中にこどもたちとよくミーティングをするんですが、こどもたちは短時間でも話を聞くということに集中できなくなることがあるんですよね。そんな時に以前なら、『あの子は態度が悪い』『話を聞く気がない』『今度げんこつしようか』と相手に対して変化を求めていたんです(笑)。
それが、コーチングを導入してからは、相手に変化を求めるよりも自分がどのように変化出来るのかを考えるようになりましたね。
『こどもが我々スタッフの話を聞くようになるにはどう話せばよいのか』『集中力を切らさずに聞いてもらうにはどんな工夫が出来るのか』ってね(笑)。ですから、より注意深くこどもたちを観察するようになりました。
結果、こどもたちをもっと観察しようとして興味関心がより湧いてくるんですね(笑)。
ですから、こどもたちのちょっとした変化に気づくようになりましたね。『声がよく出ている』『顔色が普段と比べるとあまり優れないな』『何となく元気がなさそう』『気分が乗っているな』などね。」

───── こどもたちの反応はいかがですか?

「そうですね、やはり『見られている』ということを感じ取っているようですね。
見られていると意識すると、プレーひとつひとつの動作がしっかりしてきますよね。
もちろん、プレー意外のところでもです。
普段の立ち振る舞いやあいさつ、グランドの整備や用具の手入れ、そして学業の方にも変化が見られるようになってきます。」

写真───── プレー以外の変化が興味深いですね。

「そうですね、我々TBAでは、野球のテクニックは2の次、3の次なのです。大切なのは普段の生活であり、その生活の中にある動作や態度だと考えているんです。そこが出来てこそ、自分自身が目指す目標に到達出来るプレーヤーになれると信じています。」

───── 普段の生活の中にある動作や態度ですか?

「例えば、小学生、中学生の1日を考えると、野球の練習をする時間はどのくらいあるのでしょうか。 きっと学校が終わってからの2〜3時間というところでしょうね。
1日の睡眠時間は8時間程度、そして、残りの時間が学校生活か家庭生活での時間ですね。つまり、1日の半分以上を費やすのは学校生活や家庭生活の中ということです。
その中で、常に野球のことを意識して動作や態度を取ることが、2〜3時間の野球の練習につながってきます。野球の練習時間は1日の10分の1程度にしか過ぎません。だからこそ、より多くの時間を費やす学校や家庭での時間を活かすことが大切だと考えています。」

───── 具体的な動作や態度とはどういったものなのでしょうか?

「例えば、運動をする上で重要なことがいくつかありますが、その中のひとつとして『真っすぐに立つ』というものがあります。
ユニホームを着たプロ野球選手の立ち姿は素敵ですよね。それには理由があるんです。
アゴを引き、胸を張り、背筋を伸ばしてお尻に力を入れて真っすぐに立つ。 そして、最も大切なことは、足の裏の拇指球で立つということなのです。これは、真っすぐに立つ正しい姿勢を保つとともに、正しいポジションンに体重をかけて、いつでも素早く動ける体勢を取るための基本になります。
何より、スポーツ選手に一番大切な『ケガをしない』身体の動かし方の基本なのです。
しかしながら、この拇指球で立つということは野球の練習だけでは身に付きづらく、日頃からの生活の中で拇指球を意識した立ち振る舞いが必要となるのです。

他には、集中力を高めたいのなら勉強がいいでしょう。
5分でも10分でも教科書に向き合ってみる。学校の授業時間の45分間や50分間をフルに使って、わからないところが出ないように聞き漏らさない。
『わかる』『できる』と言った良いイメージが勉強で付くことは、野球の上達にもつながると感じています。
実際にTBAの卒業生の高校の進路を調査すると、全国的にも有名私立進学校や宮城県内のナンバースクールといった進学校に進学するこどもたちも数多くいます。」

写真───── 日頃の生活に取組む姿勢が大切なのでしょうか?

「そうですね、大切です。取組む姿勢とは『意識をする』と言うことです。
自分自身がいつでも自分自身を見ている。先程、見られているとこどもたちは変わってくると言いましたが、学校生活や家庭生活など、日頃から自分自身を意識出来ている、自分自身を見ることが出来ているこどもたちは、そうでないこどもたちと比較すると変化していく速度や深度が格段に違います。
きっと、意識することで態度や習慣、環境や社会を自然と変えて行くのでしょうね。しかしながらこのことはすぐに身に付いたり実践出来るものでもありません。我々に出来ることは、こどもたちに日々丁寧に向き合うとういことくらいですね(笑)。」

───── 丁寧に向き合うことですか?

「はい、こどもたちをよく観察して耳を傾け、そして質問を投げかけることですね。
ひとり一人に興味関心をしっかりと持ち、会話をするということです。 すると、こんなことが起ってきます。
我々スタッフとこどもたちの会話の中からは、『今、自分は何を考え、どのようなことを思っているのか』『考えたり話したりしたことを実行するには、どのようなことが必要なのか』『自分の足りているところを更に伸ばすためにはどのような工夫が出来るだろうか』と言った、考えていることや思っていること、イメージしているものが、こどもたちの頭の中から『言葉』という形になってハッキリと出てきます。
更にそのことについて質問してみると、こどもたちが自分自身で答えを見つけ出すんですね。
『こうすればいい』『こういうことをやってみます』と。こどもたちに丁寧に接するということは、つまり、自分自身で課題を発見して自分自身で解決するきっかけを創り出す役割になるということです。
私たちの仕事は、答えを教えるものではないのですから。」

───── TBAのこれからの目標はどのようなところに置いていますか?

「そうですね、TBAとしては、数多くのプロ野球選手の排出ですね(笑)。
そして、プロ野球で経験したものを、またTBAや地元地域に還元していく。そのような循環モデルが出来たら嬉しいですね。そのためには仙台にクラブチームも必要ですね。
それから、こどもたちには野球をずっと好きでいてもらいたいですね。こどもたちに野球を好きでいてもらうための環境作りも大切になってきます。
小学生、中学生の野球環境作りには、野球の指導者や保護者が大きな割合を担っていますから、指導者向けや保護者向けの野球スクールなども積極的に行います。
今年のシーズンオフには、仙台を皮切りに東北地区全域に指導者や保護者の向けの野球スクールを行っています。
我々TBAは、このような野球の活動を通して『ひとづくり』や『地域づくり』を行なっています。この活動を更に広げて行くことが、これからの目標ですね。」

 

『東北ベースボールアカデミー』ホームページ→http://www.cbs-bbs.or.jp

顔写真鈴木 悟
仙台市民球団企業組合 理事長
「野球を通じてまちおこし」をテーマに、野球スクール開催や野球大会の運営企画等、精力的に活動中である。
また、東北ベースボールアカデミーでは、日々こどもたちと向き合い、こどもたちの持つ能力を最大限に引き出すこと
に心血を注ぐ。野球好きな「人材」と「地域」と「野球」の融合を探求し続けている。

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